1.商法二〇四条一項但書による株式の譲渡制限と取締役会の承認のない株式譲渡の譲渡当事者間における効力
2.株式の譲渡担保と商法二〇四条一項
1.定款をもつて株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨定められている場合に、その承認をえないで株式が譲渡されても、右株式の譲渡は、譲渡当事者間においては有効であると解すべきである。
2.株式を譲渡担保に供することは、商法二〇四条一項にいう株式の譲渡にあたると解すべきである。
商法204条1項
件名 株式譲渡担保契約無効確認請求 (最高裁判所 昭和47(オ)91 第二小法廷・判決 棄却)
原審 昭和46年10月14日 福岡高等裁判所
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
所論の各点に関する原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠に照らし首肯するに足り、右認定判断の過程に所論の違法はない。
商法二〇四条一項但書は、株式の譲渡につき、定款をもつて取締役会の承認を要する旨定めることを妨げないと規定し、株式の譲渡性の制限を許しているが、その立法趣旨は、もつぱら会社にとつて好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される。そして、右のような譲渡制限の趣旨と、一方株式の譲渡が本来自由であるべきこととに鑑みると、定款に前述のような定めがある場合に取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効であると解するのが相当である。
ところで、株式を譲渡担保に供することは、商法二〇四条一項にいう株式の譲渡にあたると解すべきであるから、叙上の場合と同様、株式の譲渡につき定款による制限のある場合に、株式が譲渡担保に供されることにつき取締役会の承認をえていなくとも、当事者間では、有効なものとして、株式の権利移転の効力を生ずるものというべきである。
してみると、これと同旨の原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 小川信雄 岡原昌男 大怺一郎